日本酒を脅かすもの⑤ ~お酒造りに使われるお水~

蒲郡の酒屋「まん天や」の日記ブログにお越しいただきありがとうございます。
木村です。

4/17の朝、蒲郡市水竹町にある中央公園の様子です。

桜の花はほとんど散ってしまいましたが、
代わりに桜の花びらで出来た「絨毯」が遊歩道をピンクに彩ってました。
少し哀しいですが、こんな桜の散り方にさっぱりした潔さも感じます。
桜にとっては、毎年恒例の「衣替え」みたいなものかもしれませんね。

蒲郡も昨日は最高気温が23度まで上がり、長袖では汗ばむ程でした。
季節は春ですが、夏の足音が早くも聞こえてきているようです。

本日のブログ「日本酒を脅かすもの」第5回目。
前回まではお米についてのお話でしたが、
今回からはお酒造りに欠かせない「お水」の話です。

1:日本酒に使われる水の基礎情報

日本酒成分の約80%はお水です。
そのため水の品質が日本酒の味わいに大きな影響を与えます。
いかに良質な水を確保するかが、酒蔵にとって重要なテーマです。

日本は気候的には雨が多く、地形的にも山地が多いです。
地表に降り注いだ雨や雪が、山地の地層に浸み込み、
長い年月をかけて砂や砂礫の層を潜り抜けていきます。

その間、幾層もの地層がフィルターとなって水は濾過され、
土壌の中のミネラル成分を取り込んでいきながら、
地下水や、河川敷の地下を流れる伏流水として流れていきます。

これらの水はカリウム、リン、マグネシウムなど、
麹菌や酵母の栄養源となる物質が豊富に含まれており、
ただの雨水から、お酒造りに最適な水へと変化しています。

まさに自然の力によって、長い時間をかけて、
お酒の大切な要素となる水は出来上がっていくのですね。

2:醸造用のお水の条件

日本酒造りに使われる水は、
洗米や浸漬、仕込み等に使用される「醸造用水」と、
洗瓶や原酒に加水する為に使用される「瓶詰用水」に大別されます。
その中の醸造用水は、普通の水道水に比べると基準が厳しく、
使用する水を事前に各都道府県の醸造試験所が実施する検査を
クリアしなければなりません。

以下に醸造用水と水道水の検査基準を表で表してみます。

 醸造用水水道水
 色彩無色透明
 臭・味異常のないこと
 鉄 0.02ppm以下0.3ppm以下
 マンガン 0.02ppm以下 0.05ppm以下
 亜硝酸性窒素 検出されないこと10ppm以下
 pH 中性または微アルカリ性5.8~8.6
 アンモニア性窒素 不検出記載なし
 細菌酸度 2ml以下記載なし
 生酸性菌群 不検出記載なし
大腸菌群 不検出

特に「鉄」「マンガン」は日本酒における有害物質で、
日本酒の色を褐色化させたり、香味を悪くさせる作用があるため、
基準値が水道水よりかなり厳しくなっております。
酒蔵は、毎年この厳しい基準をクリアしなければ酒造りが出来ないのです。

3:水質汚染は止められるか?

近年になって人口の増加や環境の悪化による水質汚染が懸念されています。

蔵元は、通常敷地内の地下水から酒造用水を汲み上げていますが、
近隣の開発による環境変化により、水質にも変化が生じてしまい、
近くの田んぼで使用された農薬、マンションからの生活排水等が、
地下水に混入してしまい、そのままでは使用出来ない状況も出てきました。

そのため、蔵元にて地下水を再度浄化する事が必要になり、
浄化のための技術(精密濾過、イオン交換樹脂法など)も進歩してきました。
この浄化の技術対策によって、不純物の混入が原因で、
前述の検査基準を達成出来ないという事は無くなりましたが、
根本の水環境自体を汚染から守る事が、一番大切な対策です。

環境省によって「名水百選」に選ばれた地域も、
その地域の住民による日々の保全活動があって、
名水は名水で在り続ける事が出来ているそうです。

美味しく日本酒を飲むためには、
まず私達が自分の心身を健康に保つ事が大事ですが、
飲んでいるお酒がどこの水が使われており、
それがどんな魅力のある水で、健全さを保つために、
どんな取り組みがなされているか。。。
そんな事に目を向けてみると更に美味しく感じるかもしれません。

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最後までお読みいただき有難うございました。
次回では実際に日本酒に使用される名水について
具体的に紹介していきたいと思います。