日本酒を脅かすもの⑭ 日本酒の個性を彩る酵母たち

蒲郡の酒屋「まん天や」の日記ブログにお越しいただきありがとうございます。
木村です。

昨日6/21(水)は夏至(げし)。一年で最も昼の長さが長い日でした。
最近真夏日が続いておりましたので、文字通り「夏に至る」ような暑さを覚悟していたのですが、
ふたを開けてみると、朝から大雨と強風が吹き荒れる台風のような荒天で、
ニュースでも荒天による被害状況の報道ばかりで、夏至の話題も完全に吹き飛んでしまいましたね。
私も外出した際、あまりの強風でカサを一本折られる被害がありました。
長男も竹島水族館に遠足する予定でしたが、悪天候のため延期となってしまいました。

先週から育てている夢吟香のバケツ稲も、強風にさらされているのを見て室内に避難しました。

稲の栽培で重要なポイントの一つに「台風対策」があります。

「強風の時は稲が倒れてしまわないように、バケツ稲を屋内の冷房が効いていない場所に移動させる」

…と、バケツ稲マニュアルにも書いてありました。

今回はまだ稲の背が低かったのでそんなにダメージは受けなかったのですが、
特に夢吟香のような酒米の稲は、背が高く成長するので強風に弱く、
今後成長していくにつれて注意が必要です。図らずも昨日の強風で予行練習が出来ました。

さて、今回のブログは「日本酒を脅かすもの」第14回。日本酒造りにおける酵母についてのお話しです。

 

1:様々な種類の酵母

酵母は自然界のあらゆるものに生育しており、色んな種類があります。
その数は約10万種類以上とも言われており、
ビールには「ビール酵母」、ワインには「ワイン酵母」、パンには「パン酵母」というように、
何をつくるかの目的に合った酵母が存在します。

しかし「ビール酵母」という名前のついたものが元々存在していたわけではなく、
ビール造りの長い歴史の中で色々な酵母が試され、
最終的に「ビール造りにはこの酵母が最適だ」と選ばれたものが「ビール酵母」となり、
ワインやパン、そして日本酒づくりにおける酵母も、同様の試行錯誤の末に選ばれました。

日本酒の酵母は、麹菌が糖化させた糖分を分解してアルコールと炭酸ガスをつくり出します。
まさにお米が「お酒」になるための重要なステップを担うのですが、役目はそれだけではありません。
日本酒の味わいを引き締める酸を産み出したり、
いわゆる「吟醸香」に代表される、日本酒独特の香りを産み出す等、
日本酒の香味を左右する重要な役割を持っており、以下のような基準で選ばれております。

1・発酵がうまくいくか
2・酸をどれくらい算出するか
3・香気は優れているか
4・発酵温度はどうか
5・もろみの中で活発に活動していく事が出来るか

このような選択基準から選び出されてきた酵母が、現在全国の酒蔵で使用されています。

ちなみに酵母が産み出す「吟醸香」と呼ばれる香りで、
洋梨やメロンのような香りは「カプロン酸エチル」という成分、
バナナのような香りは「酢酸イソアミル」という成分が生成される事で起こります。

 

2:酵母の研究。日本酒の多様化。

昔の日本酒づくりにおいて、酵母の存在は全く認識されておりませんでした。
「蔵つき酵母」と呼ばれる、それぞれの酒蔵に住み着いていた酵母が、
酒造りの際に入り込んでアルコール発酵をしていたとされています。
酒蔵の木や土でつくられた柱、壁、天井が、酵母を知らず知らずのうちに育んでいたのです。

その後明治時代に顕微鏡が導入され、酵母の存在が明らかになってから酵母の研究が飛躍的に進歩しました。
研究によって酵母は特に香気成分に影響する事が分かり、
日本酒の品質向上と共に、吟醸酒の基盤をつくったとも言われています。

さらに国立醸造試験所はお酒の鑑評会を定期的に開催し、評価の高かった蔵元の酵母を入手し、
試験所で純粋培養して、全国の蔵元に頒布しました。
これにより全国の蔵や研究所で新しい酵母の開発も進み、日本酒酵母の多様化につながりました。

酵母の開発の際は、日本酒のもろみから検体となる酵母を分離するのが一般的でしたが、
最近ではお酒だけではなく、「ナデシコ酵母」に代表される花から分離した「花酵母」など、
自然界の色々なものから酵母を開発する取り組みも行われております。

(ある蔵人さんから「クマの糞」から酵母を取り出した、なんて話も聞きました。
日本酒での実用化はされていないようですが…)

以下の表に現在認められている主な日本酒酵母をまとめました。
「協会〇〇」と頭に協会と付く名前の酵母は、日本醸造協会が開発したもの。
それ以外は各県の地方自治体が開発したものです。
(FBO利き酒師テキスト「日本酒の基」を参考にしております)

酵母名 分離源 性質
協会6号(新政酵母) 新政のもろみ 発酵力強く、澄んだ穏やかな香り、淡麗な酒質に最適、
現在ほとんど使用されていない
協会7号(真澄酵母) 真澄のもろみ 芳香良し、発酵力強、酒質優秀、最も多く使用されている
 協会9号(熊本酵母) 香露のもろみ 華やかな芳香あり7号より酸少なく短期もろみになりやすい、
吟醸酒用酵母として最も使用されている
 協会10号
(明利・小川酵母)
 東北地方 酸少なく軽快な酒質、吟醸香が高く長期もろみになりやすい
 協会11号
(アルコール耐性酵母)
協会7号の変異 リンゴ酸多く、もろみが長期になっても死滅しにくい
  協会14号
(金沢酵母)
石川県 バナナ系の吟醸香、酸少なく、淡麗な仕上がり
 広島酵母6号 喜久牡丹のもろみ 安定した発酵力
 赤色酵母 協会10号の変異 赤い色素を発し、桃色にごり酒に活用
 秋田流華酵母  - 酸少なく、吟醸香極めて高い、ふくらみのある味で後味も軽い
 山形KA
(山形酵母)
熊本酵母のもろみ 洋梨メロン系の吟醸香高く、味の切れが良い、純米吟醸、大吟醸にも広く使われている。
 アルプス酵母 長野県  洋梨メロン系の吟醸香が高く、切れ味良い
F710
(うつくしま夢酵母)
福島県 酸が低く、香りが穏やか
HD-1
NO-2
NEW-5
(静岡酵母)
静岡県 バナナ系の吟醸香、酸が低く爽やかですっきりとした味わい。

…他にもたくさんありますが、現在流通している代表的なものを紹介させていただきました。

ちなみに当店まん天やのオリジナル純米大吟醸「一(いち)」は、
表の一段目にある「協会6号」という、現在ではほとんど使用されていない歴史のある酵母を使用しており、
ふくよかでありながら切れ味の良い味わいに仕上がっております。ぜひお試しください!

最後に宣伝させていただきました!

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…最後までお読みいただきありがとうございました。
次回はいよいよお酒造りの中盤戦「発酵の工程」のお話しです。

1件のコメント

  1. […] 日本酒造りで使用される酵母は、前回(第14回 日本酒の個性を彩る酵母たち)のブログで紹介した通り、 現在では非常に数多くの種類があり、 ただアルコールを生み出すだけにとどまらず、日本酒の味わいを引き締める酸を産み出したり、 「吟醸香」に代表される香り成分を産み出す等、日本酒の香味を左右する重要な役目を担っておりますが、 […]

    ピンバック by 日本酒を脅かすもの⑮ 発酵とは何ぞや?~前編~ | 蒲郡の酒屋まん天や — 2018年4月14日 @ 6:51 PM

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