いつも蒲郡の酒屋「まん天や」のブログを
読んでいただきありがとうございます。木村です。
昨日4/7夕方、家の近所の神倉公園(蒲郡市宝町)の風景です。
この公園に植えられている木は全て桜!ちょうど満開でした。
四方八方を満開の桜に囲まれた公園は本当に壮観でした。
願わくばシトシトと降り続ける雨が、週末止んでくれますように。。
本日の本題に移ります。以前ブログで「日本酒を脅かすもの」を、
様々な切り口で皆様に紹介したいと書きましたが、
本日は酒造りの第一歩である「酒米作り」に焦点を当てて紹介致します。
1:酒米についての基礎情報
日本酒造りに使われるお米を総称して「酒米」と呼ばれます。
その中でもお酒造りに適した特長を持つものを「酒造好適米」といいます。
どのようなお米がお酒造りに適しているかというと・・・、
1・大粒であること
…精米しやすく割れにくい。小粒だと精米時に割れて屑米になる確率が高い。
2・心白(米の中心部にある白色不透明な部分)があること
…デンプン質で出来ており麹の菌糸が入り込みやすい。食用米は心白がない。
3・タンパク質・脂質が少ないこと
…米の外側部分にあり酒の雑味になる。精米はこれらを出来る限り無くすため。
4・吸水率がよいこと
…お酒を発酵させやすくする麹米に適している。
5・蒸し米にすると、外が固く内が柔らかいこと
…米を炊かずに蒸す事でデンプンを糖化し、麴菌が繁殖しやすくする。
大雑把ですが、以上の5点を満たしている事が酒造好適米の条件です。
私たちが普段食べているお米では、たんぱく質・脂質が旨味となりますが、
お酒造りでは逆に雑味となる等、同じお米でも、食用と酒用とでは
求められる部分が違う事が多くあります。
ちなみに以前、高知県の酒蔵の杜氏さんの研修で、
山田錦(酒米)を食べさせてもらった事がありますが、
パサパサしてて味も素っ気もない、という印象でした。
旨味成分であるたんぱく質が少ないからですね。
2:好適酒造米の栽培はとても難しい!
大粒で心白を持つ酒造好適米は、それに比例して稲穂の背丈も高くなり、
(食用のコシヒカリ120cmと比べ、酒用の山田錦は150cm、30cmも高い!)
台風などの強い風に倒伏しやすく、「縞葉枯れ病」「いもち病」等の病気や、
「カメムシ」「ウンカ」等の害虫にも弱い品種が多いです。
そのため、一般米よりも厳しい栽培条件と栽培者の技術が必要となります。
まとめると以下の通りです。
1・栄養分を豊富に含み、朝晩の寒暖の差が大きい場所であること
…昼の暖かい日光を浴び光合成でデンプンを作り、涼しい夜に穂へ蓄える。
2・苗の間隔をあけ、日当たり通気性を良くすること
…これで米に必要な養分が多く行き渡り、病虫害に対しても強くなります。
3・栽培技術にたける農家の手がいること
…山間部で農機具が入りにくい場所が多いので、人手、手間、技が必要。
以上の通り、酒造好適米は一般米を栽培するよりもハードルが高い為、
栽培農家も少なく、少量しか栽培されません。
酒造好適米の生産量は、お米全体の生産量の1%程度しかありません。
希少性からも酒造好適米は一般米よりも5割以上も高値で取引されております。
(食用米が1KG@300円に対し、山田錦は1KG@600円以上もするそうです!)
3:まとめ ~酒米を脅かすもの~
酒米(酒造好適米)は倒伏しやすく病害虫に弱い、更には場所を選ぶ。
このような栽培の難しさから、栽培農家、生産量自体が少なく、
日本酒のブームとは裏腹に、「酒米(特に山田錦)が足りない!」
という状況が続いています。
この状況を打破するべく、次のような取り組みが行われております。
1・栽培しやすい新たな酒造好適米を開発
…都道府県単位で品種改良の研究が日夜続けられ、
最近では山間部ではなく、平地でも栽培出来る品種や、
倒伏しにくい穂の背丈が低い品種が、品種改良でつくられています。
例えば北海道は酒米不毛の地でしたが、品種改良で栽培出来る様になりました。
2・ICTを使った栽培管理で生産体制の安定化
…富士通と旭酒造(獺祭の酒蔵)が導入したシステム「Akisai(アキサイ)」等、
ICT(情報通信技術)で、栽培作業の実績情報を収集・蓄積し、
収穫量を安定化させるための栽培方法を体系的にマニュアル化。
それを「栽培の手引き」として提供する事で、新規生産者を支援する取り組みも
ここ数年ではじまりました。(テレビCMでもやってましたね)
3・有機栽培で抵抗力の強い稲を作る
…農薬や化学肥料を使わない有機栽培をすると、米本来の力が発揮され、
倒伏しにくく、冷害、病虫害に対しても強い抵抗力を発揮します。
しかし農家の立場からすると手間がかかる栽培方法ため
一概に農薬や化学肥料を使わないのが良いとは言い切れません。
・・・山田錦をはじめ、酒米の稲はそもそもイネ科の中でも古い品種で、
栽培方法も手間のかかるものが多いそうです。
お酒を造る以前に、その原料となる酒米の栽培が、
新しい技術を導入や試行錯誤の繰り返しの中で成り立っている事が
良く理解出来ました。
次回は、具体的な酒造好適米の種類等について書きたいと思います。