日本酒を脅かすもの③ ~代表的な酒造好適米~

蒲郡の酒屋「まん天や」のブログにお越しいただき、ありがとうございます。
店長の木村です。

4/10、蒲郡の桜もすっかり満開となり、新たな年度が本格稼働してきました。
私の長男が通っている幼稚園も本日が入園式でした。
長男も今日から「年中」さん。「年少」さんの先輩として見本となる様、
きちんと振舞えるように頑張ってほしいです。

蒲郡鹿島町にある「鹿島児童遊び場」からの眺望。また曇り空・・・

今回のブログは「日本酒を脅かすもの」第3回目。
前回紹介しました酒造好適米について具体的に紹介させていただきます。

1:代表的な酒造好適米 3品種

酒造好適米に認定された品種は、今や100種を超えており、
北は北海道、南は宮崎県まで栽培されております。
この中から有名な3品種をご紹介します。

1・山田錦(やまだにしき)
…全国一の生産量を誇る「酒米の王様」です。1936年に品種登録。
大粒で心白も大きく、50%以下の高精米が可能で割れにくいのが特長です。
主に酒どころの兵庫県で生産されており、その中でも
六甲山裏地区、加東市、三木市、西脇市が栽培最適地として有名です。
造られたお酒は香味が優れており、柔らか且つすっきりとした味わいで、
鑑評会に出品されるような吟醸酒、大吟醸酒に良く使用されます。

しかしその反面、
朝晩の寒暖差が大きい山間部でしか栽培出来ない、
稲穂の背丈が非常に高い為台風で倒伏しやすい、
病気や害虫にも弱いという、非常に栽培が難しい品種のため、
栽培技術にたける農家の手が必要となり、こういった事情から、
1kgあたり600円以上という高価で市場では取引されております。

以前子どもを連れて「東条湖おもちゃ王国」に遊びに行く途中、
兵庫県加東市にある山田錦の壮大な田園地帯を車で通りましたが、
「○○酒造契約 山田錦」のような看板があちこちに掲げられており、
「山田錦は日本中の酒蔵に求められている酒米なんだ」と実感出来ました。

2・五百万石
…主に新潟県で栽培されている良質の酒造好適米。1957年に品種登録。
新潟県が米生産量五百万石を突破した事を記念して名付けられました。
出来たお米は大粒で心白の発現率が高いですが、
心白の体積が大きく外側のたんぱく質の割合が少ないため、
出来上がったお酒は非常に淡麗ですっきりした味わいになります。

飲み飽きしないすっきりとしたキレの良い味わいで有名な、
新潟のお酒造りには、この五百万石が一役買っているのです。

しかし山田錦同様、この品種も稲穂の背丈が高く、
強風で倒伏されやすいという栽培上のウィークポイントもあります。

3・美山錦
…1978年に長野県で品種登録された比較的新しい(私よりも若い!)
酒造好適米で、長野県で主に栽培されております。
長野の美しい山の頂にある雪のような心白を持つ事から名付けられました。

大粒で豊満なお米は酒造米として非常に好適ですが、この品種も
背丈が高く穂も大きく重く育つため、たわみやすく倒伏しやすいですが、
その一方で、耐寒性があるため寒冷地での栽培に適している面もあります。

出来上がった酒は、淡麗で軽快な味わいが特長です。

2:2008年の事故米事件。酒業界の厳しい現実

代表的な酒造好適米を3つ紹介致しましたが、これらに共通して言える事は
「どれも栽培が難しい品種」という事です。そのため前回でも書きましたが、
食用の一般米と比べると非常に高価なため、コスト削減のために、
「普通酒規格」の日本酒用には輸入米を使用する場合もあります。

しかし輸入米は、どこで作られどのような経路で輸入されたかが、
不明瞭な場合があり、仲介の商社に任せっきりにしてしまうと、
2008年にあった、非食用である事故米を食用として転売された事件が、
(この時の転売先に日本酒蔵はありませんでしたが)
また起こってしまう危険もあります。

再発防止のため、この事件以降ほとんどの蔵元が米の素性が分かるように、
各都道府県の信頼のおける酒造組合ルートから買い付けたり、
農家と直接契約したり、自社栽培したりと、
安全、安心を第一に品質保障出来るような原料米の確保に努めています。

しかしその反面、品質保証が出来る原料の確保が出来ない場合、
その蔵元は最終的には廃業に追い込まれるという危険もあります。
どの業界でも品質とコストダウンのせめぎ合いは起こるものですが、
日本酒のような嗜好性の強い、こだわり要素の強い飲料の場合は、
品質の面が優先しコストダウンの対応が遅れ、
経営が立ち行かなくなってしまう事もあるのでしょうか…。

現在、日本酒の製造蔵は、年間40軒以上のペースで減り続けています。
日本酒の消費量が減少するにつれ、日本酒蔵も
販売不振を理由に廃業を余儀なくされる事も少なくありません。
厳しい業界事情の中で、人の心を豊かにするお酒を造り続ける事は、
並大抵の努力では出来ない事だと思いました。

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最後までお読みいただき有難うございました。
次回は、地元愛知県の酒造好適米についてのお話です。